コロロン 〜孤独な自転車レース好き〜

2015年2月まで「ツール・ド・フランス」を「ロマンス街道ツアー」みたいな人気旅行企画と勘違いするくらいロードレースに興味がなかった筆者が、一瞬ではハマった自転車レースのことや自転車にまつわる日々を記すブログ(注:私はレース走りません)

えいぷりるふーるれーす。

注意:このレースレポートはフィクションです。
実在する人物、団体、地域とは、一切関係がございません。
現実でサイクルロードレースが見られないので、頭の中で無理やり架空のレースを捻り出してレポートすることにしました。





『エイプリルレース』


今日は初開催のレース!
エイプリルレースです!
4月1日にやるレース。本当はエイプリルフールレースにする予定だったらしいけど、将来的に別日になることを見越して4月ならいつやってもいいレースにしたものを思われます。
きっと将来的に、日本のミラノ〜サンレモと呼ばれるレースになるでしょう!

このコースは、そこそこ高低のある、変則的な周回レースになってます。
一周は、約20km。そこそこ長い。まずはここを6周。
若干のアップダウンがありつつ、どちらかといえば平坦な感じですが、スタート地点の当たりは直前ぐぐって登ります。
でも、問題は、その先。
ここがこのコースの特徴なのですが、最後の一周だけ、このスタート地点には戻りません。
平坦区間の2kmのあと、長い大きな橋を渡ります。
そしてその先に、大きな円を描くように、上に登っていくコースに入っていくのです。
なんていうの、高速道路はいるときって、ぐるぐるまわるじゃない?
あんな感じで、大きな丘をグルグルと二周回るんです。
で、二周おわったら、そこから大きくまがって、丘の中央に向かってのびる勾配13パーセントの坂を登ってフィニッシュ!!となります。

ぐるぐる2周のところは、トンネルがあります。当然そこは観戦できない区間だけど、登りだからあのトンネルのなかでもレースが動くんだろうなあって感じ。

総距離は158km!!
ラストのぐるぐるは、残り32km地点からはじまります。


なもんで、もうとにかく登りですね!登って登ってっていうレースです。
ただ、本当にきつい上りは、ラストのぐるぐる後の直線だけだけど、ずるずる登っていうシーンが多い気がします。
……こういう、円を描くようなコースって、選手にとってどうなんだろう……?



そんな疑問を浮かばせつつ、レーススタート!!!

最初2kmのパレード区間を経て、直線んでアクチュアルスタートが切られます。
逃げには、海外チームから10名と日本チームから22名。
合計32名の逃げです。

すげー!!!ミラノ・サンレモみたい!!!
海外チームから10名と書きましたが、その中に日本人選手がいます。
昨年から、海外チームに所属になった、天澤選手。
昨年は、なかなか調子がよくなくってハラハラしていたのですが、今日の走りは生き生きしていて私は嬉しい。
日本人選手は、十代の若手選手が3人ここに入っているのが、とても期待できる感じです。
海外チームの選手は、みんな若い選手なんですが、一人逃げの大ベテラン。

ジャック・デヘント。
逃げといえばこの人っていう選手なんですけど、私的には、すごく厳しい山岳コースで、一瞬疲れて姿を消した、と思ったときに後ろからざざんっ!って現れるイメージが強いです。帰ってきたデヘント、とよく呼びます。


ちょっと面白いのが、今日のレースに、出ているチームのうち3チームがよく知らないチームだったのですが、
うち1チームが、将棋の奨励会出身の方がキャプテンのチームなのですよ。
私、初めてロードレース見たとき「将棋みたい」って思ったから、将棋強い人って絶対レースの戦略の立て方すごいと思うのですけれど、
このチーム、どんな戦略をたててるのかなー。楽しみ。


1分30秒遅れて、メイン集団です。
ここは、日本人チームが率いています。
栃木のチームが2チーム。
うーむ。さすが。

1周目は様子見なのか、それほど大きな変化はありませんでしたが、2周目に入っていくとき、メイン集団の後ろでは、調子の悪そうな選手がちょこちょこいました。
が、現時点でのリタイアはなし。

2周目では、逃げの32人がわかれて、12人の先頭集団、追走6人、さらに追走14人の追走集団になりました。
メイン集団は、先頭から2分45秒くらい後ろにいます。


んーむ。思ったよりも早めにレースが動いている。

先頭集団には、海外チームの選手が7名、うち1人は天澤選手。注目していた10代は、津村選手が一人残っています。
第二集団に6人いて、これはまだ元気あるけど、次の第3集団は結構バラバラで、たぶん次の周回でメイン集団に吸収されそうです。


3周目に入ります。次にここに戻ってきたとき、トップ通過の選手は、さくら賞がもらえます。
……え、違うよ。山岳賞じゃないよ。さくら賞だよ。

最初の6周はこのスタート地点に戻る仕様なのですが、ここにめっちゃおおきな桜の木があるので、さくら賞なんだそうです。
個人的には、このスタート地点に戻る坂はきついから、桜坂賞がいいと思う。

今日は、このさくら賞と、レースの勝利と、敢闘賞の3種しか賞がないので、このさくら賞へのばちばちがすごいです。

さくら賞まで、残り10km。
先頭は12名で、協力して回っています。
第2グループは、15秒差。
第3グループは、メイン集団に吸収されましたが、大人数を一気に吸収みたいになって、一瞬集団のまとまりがくずれた、と思った瞬間、一人の選手が飛び出しました。

ポーランドの、ボディナール!!

そのまま一人で、どんどん差をつめていきます。

さくら賞まで、残り3km。
ディナールが第2グループまで一人で追いつきました!

そして、ここで、さっき先頭から遅れてこの集団にいた、10代の日本人選手2人と協調して、3人で先頭グループめがけて突っ込んでいきます。


おおお!!30代半ばのボディナールが、日本人の若者を指導している……みたいに見える。
なぜだ。走り方か?貫禄?

残り1km。
先頭グループに追いついた!

瞬間、先頭からデヘントが抜ける!同時に天澤が後ろについた!ついでにボディナールついていったよ!!
ディナールの後ろから、前で待っていた津村と、一緒に第2グループから上がった同じチームの松多がついていきます。
先頭で、中嶋選手がふんばっていますが、ついていけない!


残り400m!
天澤がデヘントを抜いた!その後ろにぴったりついたボディナール
ここからつらい登り!ちょっと後ろでは津村が松多を引いている!

残り200m!
天ちゃんとボディナールが並んだ!
コース中央よりのボディナールの横から、松多が顔を出している感じ!

残り100m切った!
ディナールが天ちゃんを引き離す!!ってここにデヘント戻った!
その後ろについて松多も戻る!うまい!!!

そして、松多がそこから一気に加速して、コース右手からぎりっぎり刺してライン通過!!

さくら賞は、松多ー!!!!
逃げの名手の帰ってきたジャック・デヘントの背後をうまく使ってあがってきた感じ。
あの一瞬で飛び乗った反応速度すばらしい!!
2位通過、ボディナール、3位、デヘント。天澤選手は4番通過で、5番通過が津村です。



さて。
さくら賞をすぎると、レースは一旦落ち着きます。
ただ、この落ち着き方が妙な感じ。


通常、こういうときは、前に出ていた逃げの選手が、逃げをやめて後ろに合流していくのですが、
今日はなんか、後ろから上がってきているんですよね。

でも、それでアタックかけて前に行こう、逃げようってしてなくて、とりあえず前に追いついて一息、っていう選手が、続々続々。
その流れが大きくて、だんだんとメイン集団が減って先頭集団が増えて結果、先頭集団がほぼメイン集団、って雰囲気になりつつあります。

そして、その逃げ遅れたって表するのもへんですが、
そのメイン集団、落車が多いのです……。

なんだろうってじっと見ていたんですけど、5周目くらいで原因がわかりました。
紫と黒のジャージをまとった、とある海外チーム。
その、エースである、ゴローナ・ヴィルス。
かれの走りが、独特なのです。

チームメイトに前をひいてもらって、彼自身は集団の前から8番目あたりを走っているのですが、
こう、カーブのときのくいってまがる感じとか、坂での一瞬のスピードの殺し方とかが、落車を誘発させている雰囲気があります。

たぶん、ゴローナ自身はのびのび走っているだけなんだと思うんだけど、いわゆるプロトンの密集した走りには、合わないというべきか、
これがまた集団走行になれた場所でのレースならまだしも、ここまでの集団の走り方っていうのに慣れない選手も多い日本のレースだから、余計……。


ゴローナの走りに怯えて、無茶して前に来て、でもそこからのペース配分がうまく行かず、だんだんと先頭集団から脱落し、ゴローナの集団にも置いていかれる選手たち。


ううーむ。
レースは映画みたいだって思うときあるけど、今日はパニックムービーだぞ。

そういうしているうちに、全体の人数をだいぶ減らして、ぐるぐる渦巻にむかうための直線区間に先頭がはいりました。
ボディやデヘントはここからいなくなっていて、最初から逃げていた選手で前に残っているのは、天澤選手ただ一人。

レース前半に集団を率いていた栃木のチームが、タイミングがよかったのかほとんど残っていて、あとぱっと見で見つけられる選手だと、静岡のチームからは佐黒選手、橋木選手が残っています。
全部で、20人くらいはいるかな。んーむ。ただ、海外勢がこんなに減るとは思わんかった。


佐黒選手が、ぐっとパワー系の走りで先頭を走ります。
黒い弾丸。かっくいい。
そのまま橋に入り、チームメイトの橋木選手と競い合うように、後ろを引き離しにかかります。
二人ともパワー系の選手だから、この直線で少しでも離しておきたいという気持ちが見えます。

そのその15秒後ろに、これまた栃木チームが率いる、一応ここがメイン集団か?

そして、その30秒後ろ。
もうこんなに近くにきていた!!
ゴローナの集団が来ています。


さあ、いよいよ今日の見所!!ぐるぐるなラウンドの登りに到着した、先頭の2人!
橋木選手は、トラックも強いから、ぐるぐるしたコースには強いはず!がんばれ!
つづいて、他の18人の選手も一斉にのぼりはじめます!

そして、ゴローナ集団では、橋を渡り終えた瞬間に、ゴローナが一人で飛び出しました。


ゴローナの登りは、ふりこ運動みたいなリズムです。
ぐん、ぐん、てその一漕ぎの瞬間に力が入るかのように、ブランコみたいに、登りの瞬間にムラがある走りをします。
そんでもって、速い!なんだこれ!

みるみる間に、前をつめて……。
ああ、前にいた10人くらいの選手のうち、3人落車!

別にゴローナ、ぶつかったり進路妨害をしているわけじゃないんですよ。
十分に間があいているときは全然問題ないのですが、間隔が密になってるプロトンに現れると、とっさに周りの選手がよけるようにハンドル操作をしてしまうようで、その連鎖、みたいな感じがあります。

……ある意味、これ、無敵。


残り12kmを切りました。
ゴローナの前にいた、選手の小さなグループがトンネルに入ります。
続くゴローナ。

そして、トンネルから最初に出てきたのは、おそらくトンネル内で抜いたのであろう、単独でゴローナ。
誰もこの速度には続けない……。

と、思ったその瞬間、トンネルからゴローナを追うように跳び出した、小さな青い影!!
あれは!


栗井村雄!!!
栃木のベテラン選手で、山を登らせたら天下逸品!
今日はあなたの日だと思ってましたくりりん!!!

くりりんは、ゴローナから少し離れたところを、必死にくらい着くようにして駆け上がっていきます。

そのころ、ラウンドを終えようとしていた先頭では、山に強い栃木の増村選手と、イタリア人のナカーネ選手が、佐黒選手と橋木選手を追い抜いて、デットヒートを繰り広げてました。

そこに迫る、ゴローナ・ヴィルス!
やや後ろから、苦しそうな顔を隠さずに、登るくりりん!
そのさらにうしろに、天ちゃんもまだいる!!

そして、ラウンド区間が終わります。
ゴローナが、先頭の二人を抜いた!
それに続く、くりりん!あとは直線の登りだけ!!


そのときです。
コース上に、直線コース脇のファンからでなく、丘の裾から、大きな声がひびきました。
「栗井いけぇぇぇぇぇ!!!」
まだラウンドの1周目だった、栗井選手のチームメイトの中野選手!!


そう。今日のコースは、
エースを支えたアシストの選手が、そのエースの最後の走りを自分の目で見られるコースになっていたのです。

今日、中野選手は、栗井選手が最後の最後に足を残せるように、ラウンドの登りにたどり着くまでずっと栗井選手のために走り続けていました。


中野選手の声が響いた瞬間。
栗井選手の頭がわずかにさがりました。

そして、
最後の力を振り絞りように、まっすぐにフィニッシュの頂上目指して登りはじめました!
ゴローナのリズムに揺れることなく、ゴローナを追うわけではなく、ただ前みて走り出した!!
増村、ナカーネ、そして天澤がそれに続きます。
そんなチームメイトに向けて叫ぶ、アシスト選手たち!

そして。
最初に、頂上に辿り着いたのは……。

両手を大きく天に突き上げた、栗井!!

くりりんが勝ったぁぁぁ!!

ゴローナは2位!!続いて、ナカーネ、増村、そして……え、いつきてたの、ジャック・デヘントが5位でした。

敢闘賞は、最初から最後までレースの中心に関わっていた、天澤選手。
うむ。納得!


ゴローナは確かに強かったけど、密になりすぎないように周囲みて注意すれば、あとはある意味足の力勝負でした。
独特なだけに無駄な動きも多いゴローナは確かに速いんだけど、無敵に見えても、本当に無敵なわけはないのです。

あきらめないで、できることをやるって大事!
あと、応援を諦めないも、大事!

また、今日みたいな面白いレースが見られるように期待して、
来年も、楽しみにいていたいと思います。


以上!
日本初レース、えいぷりるレースの感想でした!!

〈えいぷりるれーす 完〉





えー。繰り返します。
このレースはフィクションです。
実在するサイクルロードレースの選手、チーム、実際のレース、地域、一切関係はございません。
どんなに名前が似てても、「え、あの人じゃね?」って思っていても、関係はございません。
ございませんったらございません。

ただ、2021年のTOJを、私は楽しみに待ってます。
あと、パリ〜ルーベ。ルーべったらルーベ。

今、現実ではいろいろ変わって、無くなったり、終わったりしていくことがたくさんあります。
それはつらいし、悲しいことなのですが、なくなったって思っても戻ってくるものもあるし、間があいても続くものもあると思うので、
私は、今度は現実のレースの感想を、ここに書ける日が早く来るように、手洗いとうがいをしっかりして、その日が来るのを待とうと思います。

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