映画「パンターニ」 感想
映画「パンターニ」を見てきました。
www.pantani.euro-p.info
ドキュメンタリーなのも、パンターニが最後どうなるかも知っていたので、ものすごく落ち込んでもいいと思って見に行ったのですが、「凹んで動けなくなる」というダメージを受ける作品ではありませんでした。
マルコ・パンターニを全く知らない身からすると、見るまではどうしてこんなにパンターニに人気があるのかよくわかりませんでした。
この映画を見たからといって、それが「わかった!」ってわけでもないのですが、ただものすごく魅力的だったということはわかりました。
でも、いざ言葉でって言われても、うまくできないのですね。
だから映画にしたのだなとも思います。
前半の山場は、事故ったあとのパンターニの様子。
パンターニは、レース中車と接触し、足を複雑骨折してしまいます。
足に固定のための金属が刺さったまま、松葉杖をついて歩くパンターニ。
リハビリ中の映像には、自然と涙がこぼれました。
映画の後半は、ずっとドーピング関係の内容でした。
映画に映る映像の字幕では、少なくとも一度も、パンターニは「ドーピングなんてしていない」とは言いません。
映画を見ていて、ああ、やっぱり、
そういう時代だったんだな、って思いました。
それで終われるのは、私がこの頃のロードレースを一切見ていないからなのかも知れません。
100人の人からの絶賛も、
1人の「本当はみんなお前のこと裏でこう言ってるんだ」って言葉で、すべてが敵になります。
追い詰められて、
パンターニは若くして亡くなってしまいました。
とても印象的だったのが、ほぼ優勝確実になっていたジロのレースの最中に、ドーピング検査で二週間の出場停止処分になってしまった時の話。
絶望して部屋にこもるパンターニは、こう言ったそうです。
「本物のヤク中が、どんなものか見せてやる」
パンターニは、それで、コカインに手を出してしまいます。
ここが、なんだか、
伝説の男パンターニが、私と同じような人間だったって、感じた箇所でした。
どうにか助けられたのではって意見もあるだろうけど、
この時代に、繊細で大胆で強いパンターニが生まれてしまった時点で、どうしようもなかったのかっとも思います。
ただ。
生きててほしかったな。
例えば、ジロ・デ・イタリアで出発前の選手に声かけてたり、
ツール・ド・フランスの表彰式に、ゲストで現れるパンターニの姿を見てみたかったなと思う。
一度、チクリッシモかなにかのフェイスブックで、
レース前かなんかに、現役時代のチポリーニとパンターニが肩を組んでカメラに写っている写真を見たことがある。
あんな光景を、おじいちゃんになった二人で見たかったな。
でも、あそこまで絶望したパンターニが、どうしたら救われたのかを考えるのを放棄している時点で、こんなことを考える資格はないのかも知れないとも思う。