コロロン 〜孤独な自転車レース好き〜

2015年2月まで「ツール・ド・フランス」を「ロマンス街道ツアー」みたいな人気旅行企画と勘違いするくらいロードレースに興味がなかった筆者が、一瞬ではハマった自転車レースのことや自転車にまつわる日々を記すブログ(注:私はレース走りません)

ツアー・ダウンアンダー 2020 最終日 現地観戦 と、日暮れどきのオーストラリアンデイ。

いよいよ最終日。
今日は嬉しい嬉しい周回レース!!

え、伝統的なラインレースより、周回レースの方がいいのかって?
……い、いや、やっぱりこう、現地で見てると、目の前を何度も走ってくれるのが、見たくなるというか、はい、すみません。


今日だけ、バスのルートは二手にわかれます。
ウィランガヒルのふもとの町。目の前を5回通ってくれる、タウンか、もしくはウィランガヒル、フィニッシュ地点です。
私は、今回はタウンで申し込みました。
なぜなら、山だと2回、ふもとだと5回通るから!

集合時間にバス停に向かうと。
なんと、バスが3台!!
タウンが1台、頂上が2台!です。
人もいっぱい!最終日はいっぱい見に来るんだね!


ちなみに、本日のリストバンド。タウンとヒルで、色が違います。
タウンはこの色!黒くてかっこいい!

バスに乗ってスタート地点に向かいますが……気のせいか、昨日、一昨日よりも、自転車に乗ってる人がいっぱいいる気がします。


そうこうしているうちに、スタート地点!
まだスタートまで一時間近くあるので、選手たちはついていません。

待っている間に、無料で配ってる帽子をゲット、カウベルもゲット、そんでもって緑の扇子をゲット!
最終日に人が増えるから、グッズも最終日に増えた、みたいな印象です。

そうこうしているうちに、選手を乗せたチームカーがやってきました!
とりあえず、選手たちの様子を見に行きます。
スプリンター選手のリラックス具合と、総合かかってる選手のぴりぴり具合の差が凄かったです。
というか、ポート。とにかくポート。
きれっきれポート。あんまり車から出てこなかった。そうだよなぁ……と、見守ります。

グライペルが、子供を中心にファンサービスしてるのを見守り、デヘントさんを見かけてきゃいきゃい喜び、ゲシュケの髭があれ?短い?と思いながら見て、観客のとこを歩いていた砂田さんを、じーと憧れの目で見つめていたら「日本人?」って声をかけてくださってちょっとふわふわした心地になって、てこてこ歩いていると、
スタートサインを終えた、ルイスレオン・サンチェスが自転車に乗って、すーっと走って行きました。

そして、すぐ近くのアスタナのチームカーの前で止まりました。

……いまだ!!

と、すかさずさっき貰った緑の扇子と日本から持っていったマッキーの黒ペンを片手に、サインを依頼!
「サイン」じゃないよ、ちゃんと「オートグラフォ」と言ったよ!
「くっじゅーぎぶみーおうとぐらほ、ぷりーず」って言ったよ!

応じてくれたルイスレオン。

ルイスレオンのサイン入り扇子。

そして書き終わって離れようとしたときに、写真をお願いしてみたら、これもオッケーしてくれて、ツーショットも撮ってくれました。

私の顔編集で切ったけど、この距離感です。


スカルポーニが亡くなった2017年のジロ・デ・イタリア
そこでのルイスレオン・サンチェスの連日の走りは、今ふと思い出すだけでも涙が出そうになるくらい私の心を打ちました。
そのルイスレオン・サンチェスのサイン入り扇子。そしてツーショット。
嬉しい。



でも感動して選手待機エリアのとなりで泣いてたら、まじで情緒不安定な外国人怪しいことこの上ないので、そっと場所を移動。
そろそろスタートです。

カウントダウン、そして号砲と同時にスタート!



ちなみにこの時、この選手集団のほんつっっっとに最後尾を走っていたのが。

新城幸也選手。
うえぇ!ユキヤ!!スタートのときからこんな後ろ?!!


プロトンと、それに続くチームカーを見送って、そのままバスに向かいます!
いざ、出発!!


して気づいたのですが、……これ、完全にプロトンの後ろをついていってるコースなんですけど。

そうです。レースコースをそのまま走ってタウンまで着いたら止まるという仕様。
ついでにそのコースを、たくさんのスポーツバイクに乗った観戦者が、普通に走って行きます。

これ、周回レースのコースなんですけど……そのうち後ろから選手が来るのですけれど……。
選手が来るタイミングの計算が、徹底されているということなのだろうか。
日本だと考えられない……。



やがて20分くらいまっすぐ走ってタウンにつき、バスが止まりました。
あれ……、そうえいば、今日はお水がもらえなかった。


とりあえず、ざっとあたりを観察します。
大きな曲がり角に、大きなモニターがひとつ。

だけ……?

今日はきっといろんな観戦ポイントにモニターを設置しているので、ここには一つだけなのでしょう。
しかし、これは、観戦場所をどうするか難しいぞ。


もともとこの観戦ポイントは、5回選手が通るのですが、この時点ですでに1回目の通過は終わっています。


道はカーブで左にまがり、曲がった先で、大きく道が塞がれていて、U字に曲がって反対車線を降っていくレイアウトになっています。この左に曲がるカーブは、コースレイアウトとしてカーブになってるだけで、実際は交差点。
つまり、本当は交差点でそのまま右に曲がればいいところを、わざわざ一度左折させてU字にしてから、右折のコースに向かわせている……。


ふうむ。
よくわからぬ。

とりあえず、状況を把握したいので、モニター前が見える場所に場所を決め、コース脇に座ります。
大人数の逃げができていて、その逃げに、グライペルが入ってる、ということをなんとなく把握。


ずっとコース上を普通に一般人が自転車漕いでるので、なかなかいつくるのか分からなくなるのですが、ウィンウィンいってるバイクがいっぱい来ると、そろそろ先頭なんだなってわかるっていう仕様。

バイクがいっぱいくると、一般人自転車乗りはいつのまにかコース上から消えています。

そして現れる、先頭集団!
とりあえず、三日も海外でレース見ていて、一言も選手の名前を呼べてなかったので、ここですかさず「アンドレー!!!」と叫んでみた。


満足した。

次にやってくるメイン集団。
さあ、果たして、メイン集団をひいているのはどこのチームか!
現在総合1位のダリル・インピーを擁するミッチェルトン・スコットか、もしくは今日のステージ優勝を狙うトレック・セガフレード……!

と。やってきたメイン集団。

アーゼードゥーゼル?
え、何。今日はもしかして、ロメン・バルデの勝負デーなの?

アーゼードゥーゼルとトレックが入り混じり、トレックのエースのポートがいて、その後ろに位置取ってるのがミッチェルトンとサンウェブって感じで、ここにインピーがいました。


また選手が戻ってくるまで時間があったので、お昼ご飯を調達しにいきました。

そこらへんのお店で注文したピザが焼きあがるのを待っているうちに、次の周回が来てしまったので、ピザをほっぽり出してまだ次の周回を見に行きました。

今度は撮れた、グライペル

メイン集団は、アーゼードゥーゼルとトラックがコントロールしてます。
上手に撮れたピーダスン。

その真後ろにポート。

トレックとアーゼードゥーゼルにつづいて、ミッチェルトンって感じの並びでした。

写真だと選手わかるんだけど、ぶっちゃけ走ってるときは全然選手の判別がつきません。
一応ここ登りでペース多少落ちるはずだと思うのだけど……。

選手たちが通っていったので、もっかいピザ屋さんに戻ると、もう私の分が焼き上がってて、おじさんがさっとピザを出してくれました。アジア人ほとんどいないから、顔を覚えていてくれていたようです。


ピザを食べ終えて、ちょっとあたりを見渡しにいきました。
これ、私が観戦していたカーブの先の写真です。

さっき、交差点で直に曲がらせずに、一度左に曲がらせてからその先でUターンさせてるって書いたとおもうのですが、そのUターンの壁がなくなって、その先にいけるようになってました。
あの向こうが、ウィランガ・ヒル

なるほど!
これなら、道沿いに走るだけなので、選手たちも「今度どっちに行くんだっけ?」ってならないし、曲がる方法が逆になって「うわ、さっきと逆だ、コースどり間違えた!」ともなりません。
あったまいい!!

観戦位置に戻って、やってくる選手をまちました。
まずは逃げ集団。


続いてメイン集団。
今回下から仰ぎ見るようにとってみたかったので、フェンスの隙間から撮ってるので、フェンスの端っこが写ってます。

しかしこうやって現地で観戦していると、アルカンシエルってすごいです。
目の前で、あっという間に選手が走り去ってしまうので、慣れてないのもあって、他の選手は全然誰が走っていったかわからないのですが、ピーダスンだけはわかる。ポートもインピーも見つからないのに、ピーダスンは「今通った!!」ってなる。
目立つって大事なんだなぁ。


そんなことを考えながらちょっとお手洗いに行って戻ると、
ルイスレオン・サンチェスがメイン集団からアタックしてる……!?!!
おおお!今さっきサインもらった選手が!単独アタックを!!
……いや、ルイスレオンがすごい選手だって、知っててサインもらいに行ったのに、なんなのでしょうね。この感覚。
「わたし!この、今画面に写っている人に!!数時間前に!!!写真撮ってもらったんだ!!!」
って、小躍りしたいテンションになるのですよ。

人はこれを、ミーハーを呼ぶ。


ミーハーなコロロンは、もしかしたらメイン集団から逃げているルイスレオンを見られるのではないかと、今か今かと選手たちがやってくるのを待ちます。


やってきた先頭の選手。

最初に2人。
ちょっと遅れて残りの面々。

遅れてメイン集団。
ルイスレオンは吸収された模様。




さっきまでとくらべて、選手がみんな、一気にめっちゃ疲れてます。
暑そう。


これで、目の前を通るのは最後。
選手は最後のウィランガ・ヒルです。

私は集団を見送ってから、観戦場所を、モニター画面前に変更しました。
ちなみに、現地はほぼみんな、ポート応援団です。
ポートの名前を呼びながら(特に、おばさま方の声援が多い)、カウベル鳴らしています。
もりあがってるー!!

そして、ぐんぐん登るポート!!
逃げを捕まえ追い抜いていくポート!
もりあがって、もう大丈夫だ感さえ垣間見える、モニター前観戦の我々。

と、
ポートが後ろに張り付いていた選手に抜かされた!

……。
え、だれ?


で、そのままフィニッシュ!!!

会場に、広がる、「おぉぉう……」「あぁぁ……」って感じの嘆きの声。
ブーイングに備えて構える私←ブーイング苦手。

そして。
広がる拍手。

ブーイングは、ない。

そして、ちょっと静かになって、また拍手。
画面をみると、インピーのフィニッシュでした。

……い、いい観戦者だ。

優勝したのは、ロット・スーダルのマシュー・ホームズ!
ずっと逃げてて、逃げてて、最後にポートに抜かされて、ラストのラストで抜き返しての優勝!
ガッツあるな!!

リッチー・ポートはステージ2位でしたが、総合優勝でした!



まだ画面で表彰式は始まりませんでしたが、ほとんどの人はそれを見ずに帰っていくようでした。
たくさんの人が、山から自転車で降りてきます。

選手も一部のチームは、自走で帰っていくようでした。


やがて始まった表彰式をモニターで見て(たしかステージと総合だけで、他の表彰は映らなかった)、バスに乗りました。
まだ集合時間まで30分近くあったような気がしますが、ほとんどの人が乗っていた気がします。


バスが出発して、ヴィレッジエリアにつくと、16時過ぎくらいでした。
もうヴィレッジもイベントとかはやってないので、これにて、ダウンアンダーはおしまいです。


んー!!やっぱり、どんなレースも終わった瞬間は、寂しいですね。

そんなこんなで、ダウンアンダー観戦は終了でしたとさ!!!


全体の感想としては。
とにかく、オーストラリア全体の印象がとてもよかった!
英語が母国語なのに、英語ができない観光客にやさしいです。
そんで、オフィシャルバスツアーがものすごく楽で、三日間連続の観戦でも、正直、国内観戦よりも、体力的に全然楽でした。
観戦場所への移動を、確実に座れて、寝られるって、素晴らしい……。

グッズもいっぱい配っているし、選手も近いし、お客さんも多すぎない。

マイナス要素は……。
うーん、現地でレースを見ながら、展開を予想するってのは、できなかったなあ……。
バスの中で、レースの情報をツイッターでしか得られないのが、マイナスといえばマイナスかも。現地の観戦客の方は、ラジオ的なものを聞いていたので、もしかしたらそういった手段があったかもしれないのですが、実際にそれを探す方法が自分ではわかりませんでした。
あと、周回レースじゃなくてラインレースは、もともと展開予想して現地観戦を楽しむもんじゃないだろうってのがあるから、その辺はなんともいえない。
そもそも「自転車レース観戦で現地で展開を予想するのが好き!!」って人はあんまり見ない気がする……。


まあとにかく、お祭りみたいな、良い観戦旅でした!
行ってよかった!


これにて、レポート自体はおしまい!





ここから、自転車は全然関係ないエピソード。
別に笑える面白い話ではないのですが、今回のオーストラリア旅行で一番印象的な瞬間だったので、備忘録として書いておこうと思います。


ちょうどこのダウンアンダー最終日は、オーストラリアン・デイっていう祝日でして、夜18時ごろから街中でパレードやってました。

このパレードを、私は途中から見たのですが、大きなパレードで、国ごとに順々にパレードの人がやってきました。
私が見たのは、インドから。次がネパール。
間にスター・ウォーズにコスプレした方々を挟みつつ、アフリカ系の方から、ヨーロッパの方、アジアの方。
たくさんの国、民族の人がそれぞれの衣装を着て、それぞれの音楽を演奏したり手持ちのスピーカーから流したりしながら、てんでばらばらに歩いてたり、一糸乱れぬ動きで行進したりと、それぞれの文化を前面にアピールしながら歩いていました。


それを見ていて、
私は段々と、悲しい気持ちになりました。

地球儀にしたら点にしかすぎない、アデレードという小さな都市にも、これだけたくさんのルーツをもった人がいるのです。
肌の色も、髪の色も、身長も、音楽の演奏の仕方も、「みんなで揃って歩く」という概念の意味も、全部全部違います。たった数十分のパレードで、いろんな人がいて、いろんな文化があるのです。


こんなにみんな違うのに、争いなんてなくなるわけないって思いました。
平和が続く、なんて夢物語だと思いました。
今見るこの光景だってとても美しいけれど、これだって、この土地に元々住んでいたアボリジニの人たちが住んでいたところを植民地にして、移民の国として成立したからじゃないか、とか思ってしまいました。


なんだか切ないようなやるせないような気持ちになっていたら、やがてウクライナのグループが来ました。
そこは、軽トラくらいの車の荷台にのった音楽家たちが、ものすっごく楽しそうに延々と演奏をしていました。
その音楽がとても素敵で、気付いたらずっとその車の横にいられる位置で、歩き始めていました。

ずっとついていって歩いていたら、やがてパレードが終わってしまいました。
気づくと、ものすっごく広い、芝生の広場についていました。

たくさんの人が、そこで、レジャーシートを出して座っていました。
やがて、遠くの方にある野外ステージで、演奏がはじまりました。

野外フェスみたいな、コンサートです。
ほとんどの人が、レジャーシートをしいて、座ったり寝転んだりしながら、コンサートを聞いていました。


いろんな人種のひとがいました。彫りの深い人も、のっぺりとした顔の人も、大きい人も小さい人もいました。
お年寄りの夫婦から、小さい子供をつれた親御さん、若者たちの集団まで、たくさんの人がいました。
夢物語の「平和」を象徴した風景に見えました。


私も、エコバックを取り出して、レジャーシート替りに敷きました。
座って、アデレードの人に混じって、歌を聴き始めました。


だんだんと日が落ちて、空の端がオレンジ色になっていきました。
ビルが太陽を照り返して光っています。


私は、隕石でも降ればいいのに、と思いました。
もし、世界が終わる日がくるとしたら、こんな日がいいと思いました。


ものすっっっごい感傷的だけど、
おしまい!!

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