ブエルタ・ア・エスパーニャ 2016 第20ステージ
今日は、総合順位が、決まる日です。
レースが始まって、モビスターとティンコフとスカイがずっと戦ってました。
193.2kmのステージですが、残り115kmくらいになるまで、何度もアタック合戦があって、もう逃げできたかなー?って思うと、潰されてました。
やっとレースが落ち着いた頃には、集団は大きく三つに分かれていました。
先頭が、2人の逃げグループ。
アスタナのルイス・レオン・サンチェスと、コフィディスのモラール。
その後ろに、15人くらいかなあ、マティアス・フランクとかアタプマがいる追走集団。
その後ろが、総合上位陣がいるメイン集団です。
総合争いが始まったのは、レース先頭の二人が残り50kmを切ってからでした。
先頭が45km地点くらいで、メイン集団から現在総合4位のチャベスが単独アタック!!
このアタックが決まり、メイン集団との差が約25秒くらいついた時点で、チャベスを追って現在総合3位のコンタドールがアタック!
3位争いです。
でも、コンタドールはアシストが誰もいません。ティンコフ、どした!!?
一人でメイン集団をひいて上がっていきます。
そこからちょっと走ったところで、メイン集団は2級山岳を登り切ります。
そして、2級山岳の山頂になった瞬間一気にコンタドールを抜いて、現在総合2位のフルームをひっぱりながらケーニヒが出てきました!!
そのまま、アタックをかけつつ下に入ります!!
くると思った!!絶対にくるとおもった!!
たぶん、世界中のサイクルロードレースファンが、スカイが今日しかけるとしたら下りだと予想していたと思います。
だから、現在マイヨ・ロホのキンタナ擁するモビスターも遅れをとりませんでした。
プロトン、そのまま一緒に下ります。
スカイ、アタック失敗。
先頭残り33km。
ここで、オリカ・バイクエクスチェンジのチャベス、前から降りてきた、チームメイトのハウスンと合流します!
来ました!アシスト降臨戦法!!
残り30km。
チャベスグループとメイン集団、タイム差約1分。
どんどん開いていってしまっているので、コンタドール、仕方なくまた自分がメイン集団の先頭になって、下り斜面を先頭でひいていきます。
残り25km。
先頭二人。ルイス・レオン・サンチェスとモラール。
第二集団が、1分44秒差。
その後ろのチャベス&ハウスンが、先頭から6分40秒差。
コンタドールがひいているメイン集団が、先頭から約8分遅れ。
残り20km地点。
メイン集団は依然、ティンコフのコンタドールが……。
いや、ちがう。あれは、トロフィモフだ!!!前から下がってきたんだ!
ティンコフも、アシスト降臨戦法です。トロフィモフが、コンタドールのために、チャベスを追いかけて集団を引いていきます。
トロフィモフも、ハウスンも、第2集団にいれば、前のサンチェスとモラドに追いつけば、逃げ切りステージ優勝の可能性もあったのです。
でも、コンタドールやチャベスを助けるために、勝利の可能性を捨てて、降りてきているのです。
アシスト降臨戦法が面白いのは、その有効性もさることながら、その献身に心打たれるものがあるからかもしれません。
でも、こんだけ両チーム頑張っても、どっちかは勝って、どっちかが負けるんです。
先頭は残り18km地点。
ハウスンひきいるチャベスが、最後の頂上ゴールに向けての登りを登り始めました。
チャベスとメイン集団との差は、2分20秒です。かなり離されました。ハウスンの下りがはやかった!!
と、こうしている間に、第2集団のから2人が抜け出して、先頭を追走し始めます。
イアムのシャヴリエと、カチューシャのコチェトコフ。
残り15km。
ハウスン、が、仕事を終えてストップです。
チャベスが一声かけて、一人で走り出します。
ハウスン、チャベスが横をかけぬけると同時に、もう足をとめます。苦しそうに、腰に手をあてています。
オールアウト。限界まで漕いで漕いで、もう漕げないという状態。
仕事を終えて、集団を離れていく選手は何度もレース映像で見たことがありますが、漕げなくなるまで全力でエースを引き上げた選手の表情をここまで間近な映像で見るのは、初めてかもしれません。
私がもともとサイクルロードレースを好きになったきっかけは、知人に勧められて、弱虫ペダルという漫画を読んだからなんですけどね。
その中で、荒北ってキャラクター(たぶん脚質はルーラー系だった気がする)が、一列棒状のトレインで仲間を全開でひいて、力つきて「あとは頼んだぜ」って感じで、トレインから離れていくシーンがあったんですね。
そこが、一番印象的で、「ああ、『みんなで最後まで諦めずがんばろう』じゃなくて、『あとは任せた』っていうスポーツがあるんだ」って思って、それがサイクルロードレースを好きになれると思った瞬間だったのですね。
だからハウスンの、全力でチャベスを引き終わって今にも倒れるんじゃないかっていう一瞬だけ映った表情を見て、痛切に「ああ、これだ」って思いました。
チャベス、がんばって。
残り14km。
メイン集団が、ハウスンを吸収します。
ちょっと回復しています。さすが、プロ。
その間に、前方の追走集団にいたランプレのコンティが、いつのまにか、単独で先頭の二人を追走に向かっています!
現在暫定ステージ3位の位置です。
残り13km。
メイン集団で、オリカ・バイクエクスチェンジのサイモン・イェーツがアタック!
キャノンデールのタランスキーがすぐその後ろにつきます。
ここは、コンタドールが自らアタックしています!でも、すぐにイェーツがひくのをやめました。
イェーツが単独で抜け出せるならともかく、集団を引き連れて前に行っては、チャベスやハウスンが頑張って前に向かった意味がなくなってしまいます。ただ、ここで小さなアタックを繰り返して、この集団ティンコフ唯一のアシストのトロフィモフを疲れさせてしまえば、再びコンタドールが一人になってしまい、チャベスに有利になるのです。
だから、ティンコフが追いついてきたので、イェーツは攻撃をやめたのです。
残り12.2km。
先頭の二人から、ルイス・レオン・サンチェスがアタック!最初はついていったモラールですが、途中であきらめます。
そんな二人の後ろから、コンティが15秒差で迫って来ています。
メイン集団では、またティンコフのトロフィモフの引きにかわりました。
残り10km。
先頭は、ルイス・レオン・サンチェス、単独。
コンティはペースが遅れて、25秒差。
そのあと追走集団を挟んで、オリカのチャベスは、先頭から3分45秒遅れた位置を走っています。
チャベスとメイン集団とは、1分45秒差くらいです。
ここで、メイン集団では、またイェーツが撹乱アタック。
残り7.5km。
コンタドールがアタック!
でもすぐにイェーツやタランスキーがすぐ後ろにつきます。
チャベスとの差は、約2分。
ここまで、動かないフルーム。
さっきの下りアタックが決まらずに、万策尽きたのでしょうか。
そんな馬鹿なと思いつつも、でももう残りこの距離……。
残り6km。
先頭はルイス・レオン・サンチェス。
二番手のコンティは、タイム差35秒。
追走集団がいて、その後ろのチャベスは、先頭から3分30秒。
メイン集団は、バルベルデがひいていて、チャベスから2分差くらいです。
けれど、第2集団から、BMCのアタプマが飛び出して追走にやってきます!
アタプマがコンティを抜きました。アタプマの後ろから付いてきていた、フランクもコンティを抜きました。
残り4.6km。
アタプマが、ルイス・レオン・サンチェスに追いつきました!!
その後ろから、アーゼードゥーゼルのラトゥール、イアムのマティアス・フランクがやってきます。
ああ、サンチェスがもうついていけない!!
一方、メイン集団。
ついにスカイが動きます。
ケーニヒがペースアップ!でも、ケーニヒの後ろは、バルベルデ。
フルームは、キンタナの後ろです。
ケーニヒ、一人でペースを上げていきます。
残り3.7km。
ここで、前の追走集団からスカイのロペスガルシアがおりてきました。このタイミングに合わせて、ついにフルームがアタック!!でもぴったりついていくキンタナ。
そのまま、二人で集団を抜け出します。
フルームは、ロペスガルシアの後ろまで辿り着きます。
残り3.1km。
フルームが、ロペスガルシアをおいてアタックです!でも、キンタナは決して離れない!
一旦ペースを緩めるフルーム。もう一回ロペスガルシアが戻ってくるのを待ちます。
コンタドールは、もうこの攻防には全然ついていけず、後ろに遅れてしまっています。
これは、……表彰台は厳しい、か。
残り2.5km。
先頭はBMCアタプマ単独。
その後ろ、マティアス・フランクとラトゥールは、二人で協力しながら追っています。
残り2.4km。
アタプマにフランクとラトゥールが追いつきかけたところで、ラトゥールのアタック!
アタプマがついてきます。
追いついたアタプマがカウンターアタック!ついていくラトゥール。
そしてまたラトゥールのアタック!ついていくアタプマ!
二人が根性の争いを始めました。
マティアス・フランクは、ちょっと後ろに離されています。
アタプマが水分補給、の隙にまたラトゥールがアタック!
アタプマがついてくるのでもう一回ラトゥールがアタック!もっかいラトゥール!!アタプマは冷静についていきます。
その後ろで、遅れたマティアス・フランクを抜いて、トレックのフィリーネが着々と先頭に近づいてきています……。
一方フルームはずっとアタックを繰り返していますが、キンタナはずっと後ろについて離れません。
勾配がかわったタイミングで、再度フルームがアタック!でも動じずついていくキンタナ!
この距離感がかわらない限り、フルームに勝利はありません。
残り1.3km。
先頭では、ずっとラトゥールがアタック、アタプマがついていく、のアタックを繰り返しています。
その後ろから、静かについてくるフェリーネ。
残り600m。
またいくラトゥール!アタプマはきっちりマーク。
そして、アタプマのカウンターアタック!!
このころフルームとキンタナは、残り2km!
アタプマにちょっと離されたラトゥールが、また追いついてきました!
残り200m!
今度は追いついたラトゥールがもう一回ペースをあげます。アタプマがついていきます。
最後のカーブ、ここを曲がったらゴール。しかし、ここでアタプマがもうラトゥールについていけない!
最後まで、アタックをし続けた、アーゼードゥーゼルのラトゥールが勝利!!
一方フルーム、まだアタックしてますが、キンタナが離れない。
ここまでくると、1分以上キンタナに差をつけるのは難しいでしょうが、もはや意地って感じです。
残り300m。
フルーム、またアタック!
冷静についてきたキンタナが、ここでカウンターアタック!フルームはついていけません。
キンタナがゴール!ブエルタ総合優勝は、キンタナに決まりました!
総合2位は、フルーム。キンタナに、拍手を送りながらのゴールです。
一方、3位争い。
チャベスが先にゴールします。ラトゥールから3分17秒遅れ。
つまり、ステージ1位のラトゥールから4分28秒のところでコンタドールがゴールすれば、コンタドールが3位。
それを過ぎれば、チャベスが3位。
フルームがゴールしたのが、4分5秒。
そこから、一刻一刻、時間のカウントが動き、そして、4分28秒が過ぎた……。
総合チャベス、3位!
その瞬間、コンタドールの姿が現れます!奇しくも、4分28秒を超えた瞬間、ゴール付近のカメラにその姿をとらえられたコンタドール。
ここまで追いついてきていたんだ!!
しかし、もう3位のタイムは逃してしまっています。
コンタドール、ステージ1位のラトゥールから、4分41秒遅れてゴール。
総合表彰台まで、あと13秒届かず……。
これで、ブエルタの総合順位は、ほぼ確定しました。
あああ、なんかもう言葉にならない!!
ハウスンの限界までひいた直後の表情を思い出すと、あの献身ぶりが報われて本当によかったって思うし、でもコンタドールの今日のゴールに向かってきた数十メートルの気迫……!あんなに走って届かなかったんだってなんか行き場のない気持ちになる……。
うわあん!
総合表彰台も、リーダージャージ獲得もないティンコフに、チーム解散前にせめてブエルタのステージ優勝がほしい。
明日のラストステージ、ティンコフのベンナーティ勝ってくれないかなっ!
…………はっ!
でも、日本人選手の史上初グランツール勝利も見たい……!!別府や新城にも勝ってほしい。
ど、ど、どうしよう。
……みんながんばれ!!!